情報の偏在化と調査コストについて

  • 「儲かる情報があるなら、既に誰かが調査している。そのため、調査しても無駄だ」
  • 「今やインターネットが行き渡っており、企業情報は瞬時に公知となる。やはり調査しても無駄だ。」

株式投資関係のサイトや掲示板を読むと(1)、(2)のような意見があることがわかります。しかし、これらの考えの根本には、「株価変動がニュース等と強く相関する」の勘違いがあります。

事業内容に比して割安な株式を購入したほうが、自分が享受可能な実益が大きいので、私はそのような株式を購入します。そのため自然と事業評価が重要になります。しかし、投資会社等が上場企業を調査し尽くしていたら、割安な株式はなくなり、株価は常に概ね適正価格となります。

今回は、この「上場企業の事業は、果たして調査され尽くされているのか?あるいはそんなことが可能なのか?」についてです。

結論を言うと、上場企業の全事業どころか、その10分の1ですら十分な調査するのは極めて困難で、もし調査を試みると調査コストが膨大になります。

話が少し脱線しますが、調査コストがかかる事業は投資業に限りません。たとえば、建設会社は建設予定地の調査を行うし、食品会社は消費者動向を探るため、市場調査会社に調査を依頼するでしょう。調査に多額のコストがかかるのは、投資業に限らず極めて一般的です。それを”調査コストはゼロ”等と非現実的な仮定で物事を考えるのは如何なものかと思います。

なので、まず投資をする上で事業調査のコストがいか程のものか見ていきましょう。

  • ゴールドマン・サックス証券が主要に調査する会社は300社程度(同社のHPによると)。要は、売買高の少ない銘柄を調査しても、調査コスト < 売買手数料とならないのと思います。
  • 調査会社にビジネス・リサーチを頼む際、最低数十万円の費用、2ヶ月以上の期間がかかる(「情報調査のプロフェッショナル」によると)。
  • 市場調査レポートの価格は、だいたい数万円~数十万円(インターネットで調べればすぐにわかる)

要は、投資でも調査には膨大なコストがかかるということです。加えて、調査では次の問題もあります。

  • 情報の偏在化

    たとえば、ある業界に詳しい人とそうでない人がいる、ということです。ある会社の有価証券報告書を読んでいる人は、読んでない人より投資情報を多く保持している可能性が高いです。

    当たり前ですが、株式投資では投資間での情報の偏在度合いは非常に激しいです。

  • 企業評価

    素人が宝石の鑑定ができないように、何も知らない人は事業評価は全くできません。調査で得た企業情報を咀嚼することができません。何が重要でそうでないか分かりません。

    たとえば、原発素人のあなたは「福島原発で格納容器の圧力が上がっている」というニュースを聞いて何と思いましたか?「事故ってるなー」ぐらいにしか思わなかったのでは?しかし、福島原発の設計者は同じニュースを聞いて、「これはもうダメだ」と判断したそうです。

    事業評価についても全く同様で知識如何で情報の咀嚼の仕方に大きな違いが生じ、企業評価の専門知識が必要になります。これについては後述します。

  • 情報源へのアクセス

    たとえば、企業トップにインタビューを申し込む際、何の肩書もない個人投資家は門前払いを食らうでしょう。しかし、証券会社のアナリストならインタビューできるかしれません。

2012年1月3日

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