経済予想や業績予想を気にするのは止める

株価を予測するうえで、まず障害となるのは、「予想利益」の部分である。企業収益は、株価と同じくらい不規則に変動することがわかっているからである。1962年には、イギリスの事業会社に関する調査の結果、意外なことに、一株当たり利益の伸び率は基本的に、期ごとに不規則な変動をしていることが明らかになっており、アメリカの調査でも同様の結果が確認されている。ある期の企業利益の伸び率とその前期の伸び率との間には、わずか6%の相関しかなく、企業利益の伸び率の変動の94%はまったく関係がない。つまり、過去の利益伸び率から将来の利益伸び率を予測しても役に立たないのだ。

(120頁と121頁の一部を引用)

インスティテューショナル・インベスター誌は毎年10月、ファンド・マネジャー二千人を対象に証券アナリストの人気投票を行い、上位者を全米選抜リサーチ・チームに選んでいる(上位約75人は一軍、残りは二軍以下に振り分けられる)。しかし、全米選抜のアナリストは企業収益の予測でも株価の動きの予測でも、選外のアナリストと成績に変わりがない。1992年の調査では、1981年~85年の予測誤差は全米選抜チームが34%、選外のアナリストが35%となっている。誤差の個人差が大きい点を考慮すれば、この一ポイントの精度の違いは統計上、有意な差ではない。

(中略)

企業利益の伸び率にはほとんど規則性がなく、不規則な事象を予測したら外れるに決まっている。

(144頁~146頁の一部を引用)

エコノミストは景気の転換点を予測できない

シカゴ大学教授のビクター・ザーノウィッツは、1970年~75年に経済が大きく変化した四つの期間の八つの四半期先までの実質国民総生産(GNP)成長率とインフレ率について、六つの主要経済予測期間(ビッグ・スリー、GE、商務省経済分析局、全米経済予測研究所)の予測がどれだけ外れているかを調べた。それによると、48件の予測のうち46件は景気の転換点を予測できていない。


エコノミストの予測能力を平均すると、当て推量とほぼ同じである。

ほとんどの経済予測の精度は、来年も今年と同じになるという当て推量とほぼ変わりない。


つねに成績が上位の予測機関はない。

ある四半期の成績が上位でも、次の四半期に上位になる可能性と、下位になる可能性は五分五分である。ザーノウィッツの調査によれば、「どの指標についても、つねに上位を維持している予測機関はない。・・・予測機関のランキングは指標、時期、対象期間の長さによって違うばかりでなく、評価の基準や方法によっても違ってくる。」


つねに成績が上位の経済学派はない

これは、ロンドン市立大学教授ロイ・A・バチュラーとコネカット大学教授パミ・デューアの結論である。二人は六つのおもな経済学派について、経済成長率、インフレ率、金利の予測的中率に差があるかを調査した。32の予測機関の成績を調べた結果、学派による予測的中率の差はほとんどないことがわかった。


特定の経済指標について、つねに高い予測能力を実証している予測機関はない。

特定の指標について、ある四半期の予測的中率が高くても、その後、これに匹敵するような的中率を上げることはない。マクニーズが1983年と93年に行なった二回の調査では、調査対象に同じ予測機関が含まれており、この追跡調査の結果から、各予測機関の成績が不規則なパターンをとっていることがはっきりとわかる。


先進技術を取り入れても経済予測の精度は上がらない。

1000個以上の方程式を組み込んだ大規模なモデルを使っている予測機関も、わずかな方程式を組み込んだだけの単純なモデルを使っている予測機関と予測精度が変わらない。20年以上前に設立された予測機関であるベンチマークは、わずか3つの方程式を組み込んだモデルを使っているが、精度の点では、1000個の方程式を組み込んだだけのモデルを使っている予測機関と比べて遜色がない。


経済予測の能力が過去30年間に向上しているという証拠はない。

データのとりようによっては、むしろ予測能力が下がっているとも結論できる。予測能力が大幅に向上しているというエコノミストもいるが、こうした説は根拠となるデータの取り方に問題がある。(中略)エコノミストの予測誤差を単純予測の予測誤差と比較してみると、エコノミストの予測能力がまったく向上していないことがわかる。


「景気循環が存在する」という考えはただの幻想である。

周期的な景気循環が存在するという考えはただの幻想である。データを見るかぎり、周期的な景気循環を裏付ける証拠はない。たしかに、景気は好況と不況のあいだで変動しているが、図表3-5に示すように、決まった周期があるわけでも規則性があるわけでもない。

図表3-5 政府発表によるアメリカ景気転換点の時期と間隔

~ 景気循環に一定の周期はない ~

転換点の時期

転換の方向

転換点の間隔(月数)

1969/12

 
1970/11

11

1973/11

36

1975/3

16

1980/1

58

1980/7

6

1981/7

12

1982/11

16

1990/7

91

1991/3

8


経済学は自然科学に憧れているが、自然科学の手法の厳密性を取り入れようとはしない。自然科学では、まず自然観察をもとに仮説を立て、次に厳密な実験を繰り返して仮説を検証する。これに対して経済学では、研究室にこもって理屈だけで理論を導き出しており、得てして現実とかけ離れた理論になる。

(101頁の一部を引用)

景気循環に周期があるとする考え方は迷信に近く、占星術や数霊術に似ている。(中略)景気循環論のなかでもコンドラチェフの波はとくに、誤った経済予測の根拠に使われることが多い。

(106~107頁の一部を引用)

経済がなぜ予測できないか、エコノミストの予測の成績がなぜ悪いかは、複雑系の理論で説明できる。しかし、経済学を科学の一分野してみるなら、重要なのはデータである。経済統計は量も少ないうえに誤差が大きい。(中略)たとえば、IMFの「貿易動向統計年鑑」1996年版で1995年の財・サービスの貿易データをみると、香港の対米輸出は378億ドルだが、アメリカの香港からの輸入額は107億ドルとなっている(253%の差)。

(99頁の一部を引用)

エコノミストとして成功するためには、頻繁に予測を出すこと、そして、成績表をつけないことだ。これは、経済予測が盛んだった1970年代半ばに、私の同僚が企業幹部のグループに、ジョークを込めて提供した助言である。これを聴いた幹部は苦笑いした。経済予測を当てにするすることに危険を感じつつも、民間の大手予測期間の予測に高い価値を認め、高額の会費やコンサルティング料を支払っていたからだ。


その十年後には、このジョークを聴いても笑う人はいなかっただろう。経済予測は1980年代はじめごろにピークを打ち、それ以降下火になっている。誤った予測にうんざりして、企業は民間予測期間と契約を打ち切り、GE、コダック、IBMなどは社内の経済調査部門を解散した。1990年代には、インテル、マイクロソフトなどの超優良企業で、チーフ・エコノミストを置く必要性を認めているところはほとんどない。小規模な予測会社は廃業に追い込まれ、かつての有力予測期間も権威が低下し規模を縮小しており、生き残るために、事業の比重を予測から経済コンサルティングに移している。

(107~108頁の一部を引用)

2012年1月22日

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