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株式のテクニカル分析

〜 『マネーマスターズ列伝(ジョン・トレイン著)』より 〜

 株式投資の基本は企業価値の検討にある。ところが、「テクニシャン」のやっている仕事は価値にはまったく無関係で、株価チャートの型からその将来の値段を予想しようとしているだけである。

 先月や去年の株価がどう動いたかを知っただけで、来月や来年の株価の動きがわかるはずがないし、いろいろな銘柄の株価チャートについての証券会社の読み方もいかさま同然だ。証券会社に期待されている仕事は、企業に関する事実と価値をまとめ、顧客が使って投資判断できるようにすることである。この仕事は、各種公開資料の詳細な分析、調査対象やその競争会社との面接調査、業界に詳しい第三者からの聞き取り調査などを行って、その結果を投資価値検討用の資料としてまとめることである。そうすれば、間違いもまた浮き彫りになる。

 証券会社にしてみれば、そんな面倒なことはせずに、ただ、「時価50ドルでしばらくもみ合った後、54-60ドルの水準まで上がるでしょう。ただし47ドルまで下がった場合は逆指し値で売り注文を出すことです」などという無意味なお題目を唱えていたほうがどんなに楽なことだろう。おまけに当たるも八卦、当たらぬも八卦で、チャートを読む者の能力はまったく問われないのが現状だ。そんな程度でいいのなら、どんなテクニシャンでも、何百銘柄あろうがコメント出すのは朝飯前の仕事に違いない。

 私はテクニシャンに会うと必ずある意地悪な賭けを持ちかけることにしているが、誘いに乗ってきたテクニシャンはまだ一人もいない。その背景はこうだ。テクニシャンという者はその読者に、自分のいう通りに実行すれば必ず儲かるのだと信じ込ませるのが商売だ。つまり、ABCドットコム社はチャートから見て今が買い時だ、と宣言したときに顧客がすぐ千株ずつでも買えば、間もなく往復の手数料と取引税を差し引いても十分利が乗ってくるという筋書きだ。冗談ではない。そんなことをすれば、ABCドットコムの株価が20ドルとして、小さな家を一軒買うための頭金にも使える金額、2万ドルをこのテクニシャンという名の魔術師き呪文頼りに、危険にさらしてしまうことになる。そんなに自信があるなら、魔術師も自分の金でやってみてはどうだろう

 というわけで、私の賭けはこうである。まず誰かに頼んで、数年前の日足チャート集からいくつかのページを選んでもらい、会社名やコード番号などを隠して何の銘柄かわからないようにしてもらう。次に各チャートを半分に切って、前半の部分だけをテクニシャンに渡してもらう。

 この尊敬すべきテクニシャンがなすべきことはただ一つ。一枚のチャートごとに千ドルずつ私と賭けて、彼に渡された部分の最終値が、切り離された部分の特定の日の終値より高いか安いかだけを占えばいいのだ。何しろ占いにかけては自信があり、人には自分のご信託に従わせて大金を儲けさせているテクニシャンのことだ。これくらいの簡単な賭けに躊躇するタマではあるまい。それに三回のうち二回も当てればいいのだし。

 ところが前述のように、今まで会ったテクニシャンで、この提案を受け入れた者は一人としていない。もし、資金運用の受託者がテクニカル分析に基づいて運用しているのであれば、それは占星術での運用と変わりなく、まったく許せない。そんなアドバイスをする者に専門家の資格はない

 

(余談)

 残念ながら、資金運用受託者の中に、テクニカル分析を用いている人はいます。ネット上の掲示板で、そういう人を私は何人か見た。非常に残念ですが。

 



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