はじめに

株式を評価する最大のポイントは?経営者か?事業内容か?財務体質か?いずれも考慮事項です。しかし、我々が通常投資する株式では事業内容の評価のウエイトが高くなります。

話が変わりますが、たとえば、ベンチャー企業などの小企業では経営者の評価が重要となるケースが多いです。なぜなら、会社の事業の趨勢が人的資本に依拠するからです。たとえば、スポーツ選手の個人事務所はどうでしょうか?スポーツ選手がケガをしたら、事務所の売上は下がるでしょう。

あるいは、ボクシングの亀田プロモーション所属の亀田興毅選手がケガをしたら、どうでしょうか?売上はやはり下がるでしょう(もっとも、亀田選手は経営者でありません)。

同様に小企業では少数の人的資本が事業運営上重要となることが多いです。経営者に事業運営に必要な知識・経験が必要です。

(経営者の評価について)

後述の通り、一般には大企業に投資する際は経営者の評価のウエイトはかなり下がります。しかし、もし経営者の評価の重要となるなら、次のスタンスで望むのがいいと思います。自分が大企業の人事部長で、子会社の社長候補者を面接する場面を想像する。すると、経営陣を評価するポイントが明瞭になると思う。たとえば、

  • 子会社の主事業に関する知識・経験があるか?
  • 経営の経験は?
  • 会社が現在直面する課題を解決する知識・経験があるか?
  • 今後予想される事業展開に対処できそうか?

評価するポイントは会社により異なると思う。たとえば、世襲の新社長がその業界での就業が未経験とする。すると、投資評価上はマイナスになり得る。

また、たとえば、亀田プロモーションの株式が公開されたとして、亀田興毅選手(人的資本)を評価せずに亀田プロモーション株に投資するのは愚かです。

ヘッジファンドに投資する際はどうでしょうか?この種の会社に投資する際は、ファンド運用者の人的資本のみならず、保有金融資産(財務体質)も大事です。

企業によっては、事業内容よりも人的資本や財務体質の評価が重要となるケースはあります。しかし、我々が通常投資するのは、大人数が働く(少なくとも従業員100人以上の)大企業です。大企業の評価でも財務体質の評価は大事ですが、少なくとも人的資本の評価のウエイトは一般には下がります。

[大企業で人的資本の評価のウエイトが下がる理由]

要は、組織が大きく複雑だと少数の個人の資質の影響度が下がるためです。事業運営は社長単独の個人競技でなく、全社員を含めた集団競技の形相を帯びてくる。

あるいは、社長に権限が多少集中していても、株主や他の取締役との利害を調整するため社長の権限に制約が発生することもあります。

また、従業員1000人以上ぐらいの会社だと事業部制の採用も目立ちます。要は、会社が複数の事業を運営し、各事業に事業部長を任命する。事業部長には事業執行の権限がある。すると、経営者よりも事業部長の評価のほうが重要となるケースがあるかもしれません。

企業の組織形態によっては、経営者の評価が重要となりえますが、一般には大企業の投資評価では人的資本のウエイトはかなり下がります。

[事業内容の評価について]

たとえば、大昔のアメリカでは、テレビ製造会社が番組制作業も営んでました。しかし、テレビが普及するにつれ、テレビを大量生産してコストを下げる業者が現れ始めました。テレビ製造には多額の資本が必要(規模の経済性が効く)な一方、番組制作は少資本で済みます。ここにテレビ製造業と番組制作業は分かれました。少数のテレビ製造業会社と多数の番組制作会社が生まれました。

たとえば、上記のごとき構造的変化を無視して、人的資本や財務体質を重視するのは愚かです。たとえば、上記の事例で、テレビ製造会社A社は規模の経済性が十分でないとします。

この会社の経営者や財務体質が如何に優れていても、他社との競争に勝つのは困難です。A社への投資は期待外れとなるでしょう。

本章では、事業評価時に役立つ概念を説明します。

2012年2月26日

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