通貨の価値とは?常識的通貨理論の根本的誤り(2)

前の記事(これ)で物価で通貨の価値を論ずる問題点を述べた。要するに、貿易実務者が消費者物価で為替を評価すると誤った結論を導く恐れがある。調べてみると、輸入物価指数、輸出物価指数なる指標が既にあった。貿易実務者のためと思われる。


(1994年からの輸出物価指数の推移)
http://www.iist.or.jp/wf/magazine/0862/images/figure9.pdf

この表を見ると1994年→2012年で、輸入物価は1.6倍、輸出物価は0.5倍になった。もちろん、この期間、消費者物価は横ばい乃至下降である。為替レートを消費者物価で説明するのは無理がある。

では、輸出入物価で為替レートを評価すればいいか?そうとは言えない。まず、輸出入物価は輸出入数量を示さない。物の値段と数量は別次元の話。

次に物価の算出について。まず、物価指数の算出法には、概ね次の2種類があるようだ(計算式については、http://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1s.htmを参照)。

 
 

ラスパイレス方式(Laspeyres formula)

物価算出時の各商品価格への重み付けが基準時点のままなので、不正確になりやすい。たとえば、基準時点が1995年で同年の日本の総輸入額は50兆円、石油の輸入額は5兆円とする。石油の重みは5兆円÷50兆円=10%である。ここで、石油の輸入額が4倍に急増したとする。

しかし、この方式だと石油の重みは10%のまま。重み付けは5年毎に人為的に見直す。

パーシェ方式(Paasche formula)

重み付けを毎年再計算する。ラスパイレス方式より正確(だが手間がかかる)。たとえば、先の例だと石油の輸入額が4倍になったら、その分だけ輸入物価への寄与も大きくなる。

 
 

なお、日銀のHPによると日銀はラスパイレス方式を採用するようである。なぜ、わざわざ不正確な算出法を使用するか?日銀曰く「パーシュ方式だと、毎年の各商品の価格、数量のデータが必要で手間がかかる」。また、外国が日本と同じ算出法とは限らない。

次に経済統計の正確さに問題がある。中国の経済統計が不正確なのは周知の事実だが、同じことは他の経済指標にも広く一般に言える(→ここを参照)。たとえば、IMFによると、1995年の香港の対米輸出は378億ドルだが、米国の香港からの輸入額は107億ドルである。二つの数値は一致する必要があるが、著しく値が異なる

このため、香港ドル-米ドルのレートの歴史的推移を香港・米国の輸出入物価で説明するのは信用に値しない(最も、為替レートを物価の騰落で説明するのが無理な話だが)。同じことが他のレートにも言えそうである。

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2013年8月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリー:経済

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